決算公告とは?その必要性や方法、記載内容について解説!

決算公告という用語を耳にしたことはあるでしょうか?株式会社の場合は、定時株主総会後に決算公告をすることが義務づけられています。今回は決算公告の概要や方法、決算公告をしなかったときのペナルティなどについて解説します。

 

決算公告とは?

会社法 第440条第1項(計算書類の公告)で、上場会社などを除く株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社は、貸借対照表及び損益計算書)を公告することが義務づけられています。この公告のことを「決算公告」といいます。

 

公告とは広く公開することをいいます。

会社の決算の状況は、取引先や債権者などの利害関係者の関心事でもあります。取引先の財務状況が健全であることがわからないと、債権の貸倒れなど不測の事態が生じる恐れがあり、安心して取引をすることができません。利害関係者が安心して取引を行い、経済活動を円滑に行うことができるようにするために、決算公告が義務づけられています。

なお、上場会社など有価証券報告書の提出会社は、有価証券報告書などでより詳細な決算の情報が公表されているため、決算公告の義務はありません。

 

決算公告の内容

決算公告で掲載が必要な事項は、大会社以外の会社(非公開会社と公開会社)及び大会社(非公開会社と公開会社)のそれぞれの会社ごとに次のように定められています。

大会社以外の会社

(非公開会社・公開会社)

貸借対照表(要旨で可)
大会社

(非公開会社・公開会社)

貸借対照表及び損益計算書(要旨で可)

 

要旨の場合は、次のような区分で記載します。

貸借対照表 損益計算書
■資産の部
 流動資産
 固定資産
 繰延資産
■負債の部
 流動負債
  引当金(設けたとき)
 固定負債
  引当金(設けたとき)
■純資産の部
 株主資本※1
 評価・換算差額等※2
 株式引受権
 新株予約権
売上高
売上原価
売上総利益又は売上総損失
販売費及び一般管理費
営業利益又は営業損失
営業外収益
営業外費用
経常利益又は経常損失
特別利益又は特別損失
税引前当期純利益又は税引前当期純損失
法人税、住民税及び事業税
法人税等調整額
当期純利益又は当期純損失

※1 株主資本にかかわる項目は次に掲げる項目に分類します。
資本金、新株式申込証拠金、資本剰余金、資本準備金、その他資本剰余金、利益剰余金、利益準備金、その他利益剰余金、自己株式、自己株式申込証拠金

※2 評価・換算差額等にかかわる項目は次に掲げる項目に分類します。
その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、土地再評価差額金

 

決算公告の方法

決算公告には次のような方法があります。

①官報への掲載

官報は法律や政令などの制定、改正などがあった際にその内容が掲載される国が発行する機関誌です。会社の決算公告を掲載することもできます。

日刊新聞よりは掲載費用が安く、閲覧者も少ないという特徴があります。

 

②日刊新聞紙への掲載

民間の新聞会社が発行する新聞紙に掲載することもできます。一般的に掲載費用は官報よりは高くなりますが、多くの人が閲覧しています。

 

③電子公告

自社のホームページに掲載することができます。自社でホームページの更新ができるなら費用はかかりません。なお、電子公告の場合は、要旨ではなく、全文を5年間掲載しなければなりません。

 

決算公告をどの方法によるかは自由に決めることができます。しかし、一度決定した決算公告の方法は会社の定款や登記簿にも記載されることになります。そのため、変更する場合は、定款変更と登記変更の手続が必要となります。

 

決算公告をしないとどうなる?

決算公告はとても大事な制度ですが、会社からすると次のようなデメリットがあります。

 

デメリット1:決算公告には手間やコストがかかる

官報や日刊新聞紙への掲載による場合は、手続をして申し込みをした上で、期限までに入稿しなければなりません。また掲載するための費用もかかります。決算公告には手間やコストがかかってきます。

デメリット2:会社の決算情報が公開される

決算公告すると、会社の決算情報が広く公開されることになります。財務状況が良好であれば、取引先から「儲かっているんだから値下げして欲しい」などの要望が出てくるかもしれません。逆に、財務状況が悪ければ、「あの会社は危ないから」と取引を控えられる可能性もあります。会社にとっては決算情報が広く公開されてしまうことはいいことばかりではありません。

 

このようなデメリットがあるため、決算公告をしない会社も多くあります。しかし、決算公告の義務に違反すると罰則が課される可能性もあるから注意しましょう。

 

会社法976条2号で、決算公告をしなかったり、不正な決算公告をした場合には、100万円以下の過料という行政罰が設けられています。そして、この行政罰は、会社ではなく、代表取締役等の違反をした人個人に対して科せられるものとされています。

また、不正な公告を行い第三者に損害を与えた場合は、会社や役員に対して損害賠償責任が生じる場合があります。

実際に行政罰が科されるケースは多くはありませんが、このようなペナルティが設けられていることについては知っておきましょう。

 

まとめ

決算公告の概要や方法、決算公告をしなかったときのペナルティなどについて解説しました。多くの中小企業が決算公告をしていないからといって、決算公告をしなくてよい訳ではありません。会社の義務としての決算公告を理解しておきましょう。