経理担当者なら知っておきたい企業会計原則『一般原則』

企業会計原則をご存じでしょうか?普段意識する必要はありませんが、経理担当者であれば企業会計原則のことは知っておきましょう。

 

企業会計原則とは?

企業会計原則とは、企業が会計処理を行うにあたっての基本ルールのことをいい、『一般原則』、『損益計算書原則』、『貸借対照表原則』の3つの原則から構成されています。

昭和24年に経済安定本部企業会計制度対策調査会中間報告として設定され、最後の改正は昭和57年に大蔵省企業会計審議会により行われています。

個別具体的な会計処理を行うための基準である会計基準は頻繁に改正されますが、企業会計原則は、企業会計の普遍的なルールでもあり、最後の改正から40年以上にわたって改正されていません。

この企業会計原則は、法令ではありません。しかし、会社法や税法においては、公正な会計慣行を斟酌して会計処理を行うことを求めています。そのため、原則としてすべての企業が企業会計原則に則った会計処理を行うことが要請されています。

 

企業会計原則の『一般原則』7つの原則を知っておこう!

今回解説する企業会計原則の『一般原則』は、①真実性の原則、②正規の簿記の原則、③資本・利益区別の原則、④明瞭性の原則、⑤継続性の原則、⑥保守主義の原則、⑦単一性の原則の7つの原則から成っています。

 

1.真実性の原則

企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

 真実性の原則は、取引事実に基づいた真実な報告をすることを要請しています。

 作成された決算書が真実に基づかない虚偽のものであれば何の意味もありませんから、当然のことであると言えます。

 

2.正規の簿記の原則

企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

 正規の簿記の原則では、漏れなく記録されていること(網羅性)、客観的に立証可能であること(立証性)、継続性かつ体系的に記録されていること(秩序性)の3つの要件を満たすことを求めています。一般的には「複式簿記」に基づく会計帳簿がその要件を満たします。

 つまり、正規の簿記の原則では、複式簿記に基づいた正確な会計帳簿を作成することを要請しています。

 なお、正規の簿記の原則に関連して「重要性の原則」も設けられています。

重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

 正規の簿記の原則では、正確な会計帳簿の作成を求めていますが、重要性の原則によって、決算書全体に与える質的、金額的な影響が軽微である場合には、その例外として簡便的な処理が認められています。

例えば、次のような処理が考えられます。

・貯蔵品のうち、重要性の乏しいものについては、購入時に費用処理すること

・前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないこと

・重要性の乏しい引当金を計上しないこと

・本来棚卸資産の取得原価に含める必要がある関税、買入事務費、移管費、保管費等の付随費用について、重要性が低い場合に費用処理すること

・分割返済される長期貸付金のうち、一年以内に返済期限が到来するものであっても重要性の乏しいものには、その全額を固定資産として表示すること

 重要性が高いかどうかは、一律の基準ではなく、個々の会社毎にその性質や金額から判断をします。

 なお、税務上は重要性の原則という考え方はありませんので、税務申告書を作成する際には注意が必要です。

 

3.資本・利益区別の原則

資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

 資本取引とは、増資や減資など資本金または資本剰余金に直接影響を与える取引のことをいいます。損益取引とは、売上や経費など損益計算書に計上され、利益剰余金に影響を与える取引のことをいいます。

 これらはまったく性質が異なるものであるため、混同してしまうと財政状態や経営成績を正しく表示することができません。また、利益剰余金をもとに配当を出すことができますが、資本剰余金は手続きを踏まない限り利益配当の財源とすることはできません。

 そのため、資本取引と損益取引を明確に区別することを要請しています。

 

4.明瞭性の原則

企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

 明瞭性の原則は、株主や投資家などの利害関係者が理解しやすいように、明瞭に表示された決算書を作成することを要請しています。また、重要な会計方針や後発事象などの開示もしなければなりません。

 

5.継続性の原則

企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

 継続性の原則は、一度採用した会計方針を継続して適用することを要請しています。

 例えば、減価償却計算を、ある年度は定額法で行い、ある年度は定率法で行うことができると、恣意的に利益を調整することができてしまいますし、年度間での比較をすることもできなくなります。

 したがって、特段の理由がない限りは一度採用した会計方針は継続して適用しなければなりません。

 

6.保守主義の原則

企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

 企業の財政状態は健全でなければならないという観点から、利益は確実なものだけを計上し、損失は不確実であっても予測できるものは早めに計上することを要請しています。

 例えば、ある得意先に対する売掛金で回収できない恐れが生じた場合は、早期に貸倒引当金を計上することが必要となります。

 ただし、過度に保守的に考えると、逆に利益を歪めてしまうことになってしまいます。その判断にあたっては注意が必要です。

 

7.単一性の原則

株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

 単一性の原則は、会計帳簿は単一であることを要請しています。つまり、二重帳簿、裏帳簿のようなものを作成することを禁止しています。

 会社法に基づく計算書類、経営管理目的の決算書など異なった形で決算書を作成する場合においても、唯一の会計帳簿をもとに作成しなければなりません。

 

まとめ

企業会計原則について解説しました。これを覚えておく必要はありませんが、企業会計原則は会計処理の拠り所となるもの。経理担当者であれば、今回解説した内容くらいは理解しておくとよいでしょう。