現金実査の概要、目的や正しい手順を解説【テンプレート付】

会社にとって大切な現金。現金は取扱いにあたってミスが起きやすく、盗難や横領などの不正が起こる可能性もあります。そのため、ミスを防ぎ、不正を防止する目的でも定期的に現金実査を行うようにしましょう。今回は現金実査の正しいやり方について解説します。

 

現金実査とは?

現金実査とは、その時点で保有する現金をカウントし、現金出納帳などとの帳簿残高と一致しているかどうかを確認することをいいます。現金の実際在り高と帳簿残高が一致していなければ、その原因の調査を行います。

 

現金実査の目的

現金実査には次のような重要な目的があります。

1.現金を正確に管理すること

現金実査を行うことにより、会社の資産である正確な残高を把握することができます。

2.会計帳簿を正しく作成すること

レジ現金、小口現金など現金の取扱いをする場面ではたくさんあるでしょう。

現金を扱っていると、どうしてもミスなどによって現金在り高が帳簿残高と合わなくなってしまうこともあります。定期的に現金実査を行っていないと、いつの時点で差異が生じたかがわからなくなり、差異の原因調査ができなくなってしまいます。現金実査を行うことで、タイムリーに差額が生じた原因調査を行うことができ、その原因に基づいた帳簿の修正などが可能となります。その結果、正しい会計帳簿を作成することが可能となります。

3.会社の資産を大切に管理すること

現金は会社の大切な資産です。現金の場合はたとえ少額であっても滅失することを防がなければなりません。現金実査は、会社の重要な資産を守るための内部管理でもあります。

4.不正を防止すること

現金は盗難や横領などの可能性がある重要な資産です。現金実査を行うと、不明な差異が生じたらすぐに判明し、原因調査が行われます。現金を厳格に管理しているということを示すことで、盗難や横領などの不正を予防することができます。

 

現金実査はどれくらいの頻度で行えば良い?

現金実査をどれくらいの頻度で行えばよいかは、現金の入出金の頻度にもよります。

毎日入出金がある場合は、毎日実査を行っておくことが望まれます。小売店や飲食店など現金の動きが大きい業種の場合は、毎日の現金実査は必須といえます。

 

現金実査の手順、正しいやり方、現金実査表のテンプレート

手順1:その日の入出金を締め切る

現金実査は、通常、実査当日の現金の入出金がすべて終わったタイミングで行います。

手順2:現金をカウントし、帳簿との差異がなければ問題なし

まず、現金をカウントし、その在り高を現金実査表に記入します。
その時点の現金の実際在り高と現金出納帳との会計帳簿を照合し、差異がなければ問題ありません。

手順3:差異があれば差異原因の調査、会計帳簿の修正を行う

差異が生じていた場合、現金のカウントミスの可能性もありますから、再カウントを行いましょう。カウント誤りがなければ、差異の原因を調査します。

差異の原因には、現金を受け入れたが会計帳簿に記録していなかった、経費を使ったが会計帳簿に記録していなかった、などが考えられます。会計帳簿の記録誤りであれば会計帳簿を修正します。会計帳簿に特に問題がなく、別の理由があれば、現金実査差異調整表を作成します。

現金実査を行うと、そもそも業務フローや管理上の問題がわかることもあります。このような場合は、すぐに上司に相談して管理方法の改善を検討しましょう。

手順4:上長の確認を受ける

その後、上長に、現金実査表、現金出納帳、現金実査差異調整表を提出し、実査結果の確認を受ければ、現金実査が終了です。
上長は、抜き打ちで自らが再度現金をカウントして、現金実査が正しく行われているかどうかを確認することも有効です。

現金実査表テンプレート(Excelファイル)

 

現金過不足があったときはどうする?会計仕訳は?

現金過不足があったときはその金額の大小にかかわらず、まずはその原因を追及しましょう。少額の現金過不足だから仕方がないと原因追及をせずに、過不足の経理処理だけで済まそうとすると、「少額であれば現金が足りなくても問題ない」ものとと考えて、それがきっかけに不正が発生する可能性があります。頻繁に現金過不足が起こるときは、実査の頻度を多くするようにしましょう。

調査の結果、現金過不足の原因が判明したときは、その原因に応じて会計処理を行います。

 

例えば、小口現金の実際在り高が帳簿残高より1,000円不足していたが、調査すると、消耗品を購入したときのレシートが出てきたときは次のような会計仕訳を計上します。

(消耗品費)1,000/(小口現金)1,000

 

調査の結果、現金過不足の原因が判明しなかった場合でも、そのままでは現金の残高が合わなくなるため、会計処理が必要です。

例えば、例えば、小口現金の実際在り高が帳簿残高より1,000円不足していたが、その原因が判明しなかったときは次のような会計仕訳を計上します。

(雑損失)1,000/(小口現金)1,000

逆に、実際在り高が帳簿残高より1,000円多かったが、その原因が判明しなかったときは次のような会計仕訳を計上します。

(小口現金)1,000/(雑収入)1,000

 

なお、小売店や飲食店のように現金の取扱い頻度が多く、現金過不足が日々生じる場合には、「現金過不足」勘定を使うこともあります。

 

レジ現金の実際在り高が帳簿残高より1,000円不足していたとき(原因不明)

(現金過不足)1,000/(小口現金)1,000

レジ現金の実際在り高が帳簿残高より1,000円多かったとき(原因不明)

(小口現金)1,000/(現金過不足)1,000

この場合は、決算時にまとめて、「雑損失」勘定(現金過不足が借方で残ったとき)または「雑収入」勘定(現金過不足が貸方で残ったとき)に振替する処理を行います。

 

まとめ

会社の重要な資産でもある現金を正しく管理するため、現金実査は必ず行う必要があります。ここで解説した内容を理解して、正しく現金実査を行ってください。なお、現金以外にも金券、切手、印紙などを保有している場合には、それらについても定期的に実査を行うようにしましょう。