最低賃金とは?最低賃金の種類や額について解説

労働者を雇用すると、使用者である会社や個人事業主には、労働の対償としての賃金支払い義務が生じます。賃金は、労働者の生活の基盤となるものであり、労働条件の中でも最重要の項目です。

そのため使用者が自由に賃金を決定することはできず、支払い方法や最低額など様々な面で法による制限が設けられています。当記事では、賃金に関する最低基準である最低賃金について解説を行っているため、これから労働者を雇用しようという方や、賃金に興味のある方は是非参考にしてください。

 

最低賃金とは

最低賃金は、賃金の低額な労働者について、賃金の最低額を保障することを目的として、最低賃金法によって定められています。賃金の最低額を保障することによって、労働条件の改善と生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争が可能となり、経済の発展に寄与することにも繋がります。

最低賃金額は、時間によって定めるものとされています。ただし賃金が日や月など時間以外の期間や出来高払い、請負制によって定められている場合には、当該賃金を時間当たりの金額に換算して適用することが必要です。

また使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対して、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。労働契約に当たり最低賃金額に達しない労働条件を定めた場合には、その部分について無効となり、無効となった部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます。

 

最低賃金の対象となる賃金から除外される除外賃金とは

次の賃金は、最低賃金の対象となる賃金から除外され、除外された賃金が最低賃金額以上でなければなりません。

・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
・時間外割増賃金
・休日割増賃金
・深夜割増賃金
・精皆勤手当
・通勤手当
・家族手当

資格手当や役職手当、職務手当など、通常の労働時間や労働日に対応して支払われる賃金は、最低賃金の対象となる賃金に含めます。

 

 

最低賃金の減額の特例とは?

最低賃金は、いかなる場合であっても適用されるわけではありません。
次の者を使用する場合に使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、労働能力等を考慮して定めた減額率により減額した額を最低賃金額とします。

・精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
・試みの試用期間中の者
・一定の認定職業訓練を受ける者
・軽易な業務に従事する者
・断続的労働に従事する者

 

 

最低賃金の種類(地域別最低賃金と特定最低賃金)

最低賃金には、都道府県ごと全国各地域について設定されている地域別最低賃金と、一定の事業又は職業ごとに定められている特定最低賃金の2種類があります。地域別最低賃金は、都道府県ごとに必ず設定されていますが、特定最低賃金の設定は任意であるため、全ての事業又は職業で定められているわけではありません。

 

地域別最低賃金

地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費や賃金、事業の賃金支払能力を考慮して、厚生労働大臣又は都道府県労働局長が決定します。毎年のように最低賃金の引上げが行われ、2022年の引上げにより、全国加重平均額は961円(前年度より31円増)となりました。

 

特定最低賃金

特定最低賃金は、労働者又は使用者の全部又は一部を代表する者の申し出に基づき、厚生労働大臣又は都道府県労働局長が決定します。また特定最低賃金において定める最低賃金額は、当該特定最低賃金の適用を受ける事業場の所在地において定める地域別最低賃金を上回る額でなければなりません。

1例をあげると、2021年度の北海道における特定最低賃金は、次のように設定されています。

都道府県 地域別最低賃金 業種 時間額
北海道 920 処理牛乳・乳飲料、乳製品、糖類製造業 954
鉄鋼業 1000
電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器具、情報通信機械器具製造業 955
船舶製造・修理業、船体ブロック製造業 948

 

複数の最低賃金の適用がある場合はどうなる?

地域別最低賃金と特定最低賃金双方の適用がある場合には、双方の定める最低賃金額のうち、最高のものを最低賃金額とします。また派遣労働者の最低賃金額は、地域別最低賃金においては派遣先事業場の所在地によって決定され、特定最低賃金の場合にあっては、派遣先の同種の労働者の職業に適用される特定最低賃金を適用します。

 

 

最低賃金を守らなかったらどうなる?

労働者は、事業場に最低賃金法に違反する事実があるときは、当該事実を都道府県労働局長や労働基準監督署長、労働基準監督官に申告して適当な是正措置を取るように求めることができます。使用者は当該申告を行った労働者に対して、解雇をはじめとする不利益な扱いをしてはなりません。

申告したことを理由として、労働者に対して不利益な取り扱いをした使用者は、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。また最低賃金の適用を受ける労働者に対して、地域別最低賃金額及び船員に適用される特定最低賃金額以上の賃金を支払わなかった使用者は、50万円以下の罰金に処せられるため、申告と併せて注意が必要です。

船員を除く特定最低賃金に満たない額の賃金しか支払わなかった場合においては、最低賃金法上の罰則はありませんが、賃金の全額払いの規定に触れるため、労働基準法上の罰則(30万円以下の罰金)が適用されます。

 

 

まとめ

賃金は、労働者にとって最も重要な労働条件であるため、最低賃金という制限を設けて、労働者の生活の安定を図っています。また政府は最低賃金の全国平均額1,000円以上を目標として設定しており、今後も最低賃金額の上昇が見込まれます。

労働者の生活の基盤である賃金の支払いは、労働者との間で特にトラブルになりやすい分野です。また最低賃金法違反には、罰則も予定されているため、当記事を参考にしっかりと最低賃金額以上の賃金を設定し、トラブルを未然に防止してください。