【起業家インタビュー】株式会社アシェルパ  代表取締役・上田重雄様

建築業界は、そもそも業務の工程数が多いことに加え、長時間労働の常態化や、労働者の人材不足など多くの問題を抱えています。働き方改革が叫ばれる昨今、現場調査や測量といった業務プロセスの一部をサービス化し、ニーズの掘り起こしを図ろうと起業したのが、内装工事の現調屋を運営する株式会社アシェルパの代表取締役・上田重雄様です。内装工事を専門に事業を展開しており、またその分野における調査会社は業界唯一で、他社の追従がありません。

業界経験30年以上のキャリアこそ、ニーズを捉えたきっかけ

若い頃、内装工事会社で会社員として働いた後、独立。個人で内装設計・測量業を10年程ほど営みました。内装工事専門の調査会社「現調屋」を立ち上げたのは2015年です。
自分はこれまでのべ30年以上、この業界に携わってきました。業界全体が直面している人手不足や長時間労働などの問題を目の当たりにしました。また近年、商業施設やテナントなど大規模な改装工事においても初期投資を抑える傾向にあります。工事工程の一部を外注化し、コストを合理化したいというニーズは、長らく業界全体にあったものと考えています。
弊社業務は、元請けである建築会社などから受注するBtoBに限られます。長年この業界に携わっていたため、横のつながりは広く付き合いも深いので、営業で仕事をとってくる必要がありません。会社設立からまだ10年未満ですが、ようやく弊所サービスが業界内で認知され始めたところですので、今後よい流れが出来ればと思っています。

 

コロナ禍を乗り越え、より成長していきたい

とにかく苦労したのはコロナ感染拡大時ですね。
会社設立時は自分一人だったのですが、幸運にも、比較的早い段階で業績好調となり、従業員を数名雇い入れることにしました。ところが直後、コロナの影響で仕事が激減。売り上げが立たない状態が2~3年続き、従業員の雇用維持のため身を削るしかない状況に陥りました。その際、コロナ融資を受けています。これを借りなければどうしても事業を継続していくことが難しい事態でした。
これから返済が始まりますが、幸いにも今年、経営を黒字に転じさせることができました。
今後、融資の見直しを検討する必要も出てくるかもしれませんが、この勢いに乗って、コロナ前よりもより多くの収益を上げられるようにしていきたいと考えています。

 

大阪府「経営革新計画承認企業」に認定

設立当初、新事業立ち上げということもあり、金融機関から融資を受けるのは困難でした。
そこで大阪府の経営改革計画に申請することにしました。計画が承認されると、信用保証の特例など様々な優遇措置が受けられるほか、補助金などで加点評価の対象となるなどメリットが大きかったので、積極的に取り組みました。
申請にあたり事業計画書を作成しました。事業の中長期的なビジョンや経営方針、事業の合理性などを明確に示したことで、設立の翌年2016年、弊社は無事その承認企業となることができました。また事業計画書を作成したことで、自分自身も事業全体を客観的に見直すことできたので、非常によかったと思っています。

 

困難に直面し、お金の知識を身に付けておけばよかったと痛感

独立した当初は、自分一人で設計業務を行っていました。仕入れもなく、借り入れの必要もなく、初期投資がほぼ不要な状態からのスタートでした。
お金について悩んだのは、法人化し社員を雇い入れた直後、コロナに直面した時です。自分にはお金に関する知識が少なかったことを痛感しました。当時、資金繰りが必要になり、コロナ融資を受けました。
もし起業するのであれば、いざというときのために、お金に関する情報や知識をできるだけ身に付けておくとよいと思います。

 

次の10年は、サービスを根付かせる定着段階へ

コロナ収束で市場が動き出し、最近になってようやくサービスの認知と浸透が進んできたと感じています。受注数も売上も順調に増えてきているので、業界初の強みを活かし、今後10年くらいかけて、サービを業界に根付かせていくことを目指します。

 

事務局からひとこと

事業を大きくしようとした矢先のコロナ禍。厳しい経営環境の中、今期は黒字化を復活させ、次の10年を見据えています。インタビューを通じて感じたのは、上田社長の信念の強さと冷静さです。ご自身のやり方を信じて努力を重ね、成功されたと言ってよいのではないでしょうか。これからも上田様が事業に専念していただけるよう、出来る限りのサポートをさせていただきます。