インボイス発行事業者が免税事業者に戻りたいときはどうすればいい?

インボイスの登録申請を行いインボイス発行事業者となったものの、結局、消費税の負担が増えただけであまりメリットがなかった、ということもあるでしょう。そんなとき、登録を取り消して免税事業者に戻ることができるのでしょうか?今回は、インボイス発行事業者が免税事業者に戻るための手続きについて解説します。

 

インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)とは?

インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)とは、税務署にインボイス発行事業者となる旨の登録申請を行い、登録された者のことをいいます。登録を受けると、課税事業者として消費税の申告が必要となります。

消費税法で、その課税期間の基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除されていますが、インボイス発行事業者となった場合は免税の特典を受けることができません。

 

インボイス発行事業者が免税事業者に戻るための手続き

一度、インボイス制度事業者の登録を受けた場合でも、一定の手続きをすることにより、消費税の免税の要件を満たす期間については、免税事業者に戻ることができます。その際に必要となる手続きは次のとおりです。

1.インボイス発行事業者の登録取消し

「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(登録取消届出書)を税務署に提出することにより、インボイス発行事業者の登録の取消しを受けることができます。

インボイス登録申請書の提出のみによって、課税事業者となっている場合は、登録取消届出書の提出のみで、消費税免税の要件を満たす課税期間については、免税事業者に戻ることができます。ただし、後で説明するように免税事業者に戻るタイミングは決められていますので注意してください。

 

登録取消届出書の記載事項

登録取消届出書には次の事項を記載する必要があります。

・納税地

・氏名又は名称及び代表者氏名

・法人番号

・登録番号

・登録の効力を失う日

・適格請求書発行事業者の登録を受けた日

 

登録取消届出書の提出期限

翌課税期間の初日から登録を取り消そうとするときは、翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに届出書を提出する必要があります。

 

(例)3月決算の法人の場合は次のようになります。

×1年3月17日までにこの届出書を提出した場合 ×1年4月1日(翌課税期間の初日)から登録の効力を失う
×1年3月18日から×1年3月31日までに提出した場合 ×2年4月1日(翌々課税期間の初日)から登録の効力を失う

なお、この届出書については、土日祝日の場合でもその翌日に期限が延長されることはありませんので、注意してください。

 

2.消費税課税事業者選択不適用の手続き(課税事業者を選択している場合)

「消費税課税事業者選択届出書」(課税選択届出書)を提出し、課税事業者となることを選択している場合は、適格請求書発行事業者の登録の効力が失われた後も、課税選択届出書の効力は残るため、そのままでは『適格請求書発行事業者でない課税事業者』となります。

この場合、基準期間の課税売上高が 1,000 万円以下であるなどの理由により事業者免税点制度の適用を受ける(免税事業者となる)ためには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。

なお、課税選択届出書を提出して課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書を提出することはできません。

 

 

登録日から2年間は免税事業者に戻ることができない

インボイス発行事業者の登録を受けた場合、登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、基準期間の課税売上高にかかわらず、納税義務が免除されないという縛りが設けられています。そのため、登録取消しの手続きをしたからと言って、すぐに免税事業者に戻ることができない可能性があります。ただし、2023年10月1日を含む課税期間に登録した事業者については、この2年縛りがありません。

 

整理すると、インボイス発行事業者の登録を受けたタイミングと納税義務継続の縛りの有無は次のようになります。

2023年10月1日を含む課税期間に登録を受けた場合 2年間の納税義務継続の縛りはなく、翌課税期間から免税事業者となります。
2023年10月1日を含む課税期間の翌課税期間以後に登録申請に関する経過措置の適用により登録を受けた場合 登録日から2年経過日の属する課税期間の末日まで納税義務は免除されません。

 

なお、経過措置の適用を受けず、「課税事業者選択届出書」を提出して、課税選択した場合は、課税選択した課税期間の初日から2年経過日の属する課税期間の初日以後は、課税選択不適用届出書を提出することができます。この場合は、課税選択不適用届出書の提出日の属する課税期間の翌課税期間以後は、納税義務がなくなります。つまり、インボイス発行事業者の登録日からの2年縛りはありません。

 

 

まとめ

インボイス発行事業者の登録を取消して、免税事業者に戻るための手続きについて解説しました。免税事業者に戻ることはできますが、書類を提出したらその日からすぐに戻ることができる訳ではなく、提出期限や期間の縛りなどがありますから、注意してください。