伝わる事業計画書を作成するための11のポイント

事業計画書は、株主や金融機関など会社を取り巻く多くの関係者が見るもの。内容次第で資金調達を受けることができたり、できなかったり、大きな影響を与えることもあるとても大事なものです。今回は利害関係者に伝わる事業計画書を作成するためのポイントについて解説します。

 

伝わる事業計画書を作成するための11のポイント

1.事業計画書の役割を理解する。

事前計画書は、文字通り、事業を進める計画をお金(数値)で示したものですが、機械的で無機質なものではなく、そこに事業の明確なビジョンや経営者の情熱を吹き込むことにより、初めてコミュニケーションツールとして活けることになります。

また、一般的なコミュニケーションと同様に、論理的かつ分かりやすく相手に伝えることが重要です。

事業計画書には様々な活用方法が考えられ、事業計画書の作成目的に応じ臨機応変に作成することが求められますが、通常、事業計画書には鮮度(またはタイミング)が求められ、いつ作成され、いつ事業を展開するのか?といった時間的な変化やタイミングを常に念頭に置いておく必要があります。

 

2.事業はイメージを浮かべながら具体的に描く

事業を描くにあたっては、その作成目的に応じて事業計画を示す相手に対し、わかりやすい言葉で明確に伝えることが必要です。

事業計画書は、主として、仲間や出資者、顧客、金融機関から共感を得ることを目的に作成しますが、この場合、大枠として

①事業名
②顧客
③価値
④提供方法
⑤目標

の5つをはっきりさせることが重要です。

 

この場合にも、やはりわかりやすさが求められますが、想像力を駆使し、ある程度の具体性を持たせると一層説得力が増します。

 

例えば、

① 生演奏を聴かせてくれるジャズクラブ・チェーン
② 40代の働き盛りの都会人
③ 日々の仕事の疲れを癒せて、ゆっくりとした時間を楽しめる
④ お店で銘酒とジャズの生演奏を提供
⑤ 音楽の生演奏のある都内のクラブで「居心地」No.1

といった具合です。

 

3.事業の強みをアピールする

その事業の強みを持つことによって、事業を描いた際の「提供方法(お店で銘酒とジャズの生演奏を提供)」の内容が、具体的で力強いものとなります。

 

事業の強みは、顧客の満足度を他社よりも引き上げることによって達成されますから、描いた事業の「顧客(40代の働き盛りの社会人)」と「満足(日々の仕事の疲れを癒せて、ゆっくりとした時間を楽しめる)」が事業の特徴を際立たせ、自社の強みとなる重要なキーワードとなります。

 

具体的には、事業にとって必要なものを考え、そのうち「顧客」と「満足」の観点から、特に重要であると考えられるものを事業の強みとしてアピールします。

 

例えば、ジャズクラブの場合、

立地・外装・内装・ステージ・家具・照明・宣伝・スタッフ・お酒・音楽など、様々なものが事業に必要となりますが、「顧客(40代の働き盛りの社会人)」と「満足(日々の仕事の疲れを癒せて、ゆっくりとした時間を楽しめる)」のフィルターを通した場合、特に内装・お酒・音楽が重要と考えられため、

日々を忘れられるような空間で

質の高いジャズを連日組み

圧倒的な品揃えの銘酒を提供

というように事業の強みを決めていきます。

 

4.事業展開の方法を具体的に考える

自社の強みを活かし、利益の最大化を図っていくため、事業の強みを作るのにどうしていけばよいかを考えます。

 

日々を忘れられるような空間で

質の高いジャズを連日組み

圧倒的な品揃えの銘酒を提供できる

ジャズクラブをすぐに作ることができればよいですが、現実には様々な制約があるため、それを育てるための事前の準備が必要です。

 

中長期計画は、将来の目標となるとともに、その目標達成のために、今何をしなければならないか?という道しるべにもなることから、希望や楽観的な予見のみで作成せず、客観的に作成することが重要です。

 

5.お客様視点に立つ

当然のことながら、新規に事業を起こす場合、現在の需要か将来の潜在需要がないと事業は成功しません。また、自社が共有し、需要に応えることが必要です。

 

そのため、お客様が何を望んでいるか?お客様が今抱えている問題は何か?を明確にし、現状の問題点を解決・達成できる自社商品やサービスを作っていく必要があります。

 

6.ミッション(使命)、経営者の熱意を吹き込む

ミッションとは会社の行う使命のことであると同時に、経営者が自分に対して課す約束事です。ミッションは社是、ビジョン、経営計画などに影響を与える根本となるものであり、簡潔で共感を呼ぶよう、短く明瞭な言葉を選ぶように心がけることが重要です。この場合、なぜ自分(会社)がこのミッションを帯びたのかを、社会情勢や自分の体験により具体的に補完・裏付けすることにより、グッと共感を呼ぶものになります。

事業計画書は、単なる数値や計画の表現ではなく、コミュニケーションツールです。したがって、自らの決意や想いを伝えて、共感を呼ぶことが重要です。また、ミッションを、明確にすることにより、事業拡大の指針になったり、それを構成メンバーで共有することにより、苦境を乗り切る原動力になります。これは長期的に事業を成功させるためには不可欠な要素です。

 

7.業務モデルと課金モデルを詳細に設計する

業務モデルと課金モデルを設計しましょう。

ここで注意すべきなのは、「Who(だれ)」が収益モデルでは直接の顧客となります。

しかし、業務モデルでは直接の顧客に限られません。

例えば、広告代理事業であれば、直接の顧客は広告主ですが、広告の対象は広告主の顧客となります。

 

8.顧客の広がりを描き、客単価を決定する。

初期の顧客を中心に、顧客がどのように広がっていくのかをイメージします。あまり細分化しすぎず、通常は大まかに①初期②中期③後期の三段階程度で設定します。顧客になりそうな人や会社のイメージをキーワードで並べて、顧客の広がりを描いていきますが、この場合、「初期の顧客」のイメージが一番容易につくため、初期の顧客のキーワードを中心に置いてから始めるとスムーズにいきます。

 

一方、客単価の決定は、自社商品やサービスの利用によって、顧客の果たそうとしている用事の大きさの視点から決定します。例えば、ジャズクラブの場合、利用者が「商談を決める」用事で積極的に利用する場合と、「友人との付き合い」で利用する場合では、客単価は変わってくるでしょう。想定利用者を「用事」の観点から細分化し、それぞれのケースに応じた適切な客単価を導き出す必要があります。

 

9.競合他社を分析して、自社の優位性を見つける

自社の優位性を見つけるためには、SWOT分析を行うのが一般的です。

SWOT分析とは、①Strength(強み)②Weakness(弱み)③Opportunity(機会)④Threat(脅威)を分析することであり、表裏一体ですが、自社の強みと弱みにスポットを当てて分析することも、競合他社の強みと弱みにスポットを当てて分析することもあります。

自社の強みと弱み、その背景となる(強みをもたらす)機会と(弱みをもたらす)脅威を分析することは、自社の戦略的ポジショニングや経営戦略を適切に行ううえでも重要になるため、適切かつ客観的に行うことが求められます。

 

10.いつ儲けるかを考える

新規事業が初年度から儲かる事業なのか、何年かかって儲けを出していく事業なのかによって事業の展開方法は全く変わってきます。そのため、事業の収支計算表を作成し、シミュレーションを行うことが必要です。

基本的項目としては、①売上②費用(人件費+その他)③営業利益(売上-費用)④営業利益率(営業利益/売上)⑤累積利益(創業から現在までの利益合計)が挙げられますが、必要に応じて項目を追加します。また、これに先立ち、販売計画や人件費計画および人件費以外の費用計画を作成しておく必要があります。

 

11.損益分岐点を把握する

収益分析を行うと、大体いつ頃に黒字になるかが見えるため、損益分岐点を把握します。損益分岐点とは、黒字にするためのギリギリの売上高、つまり、採算ラインのことです。

「いくら売ればどれくらい儲かるか」を把握しておくことは事業を運営する上で不可欠のことです。

 

 

まとめ

伝わる事業計画書を作成するためのポイントについて解説しました。大切なことは事業やお客様への想いを乗せて、とにかく具体的に作っていくこと。完璧な事業計画書は簡単にできるものではありません。まずは作成してみて、いろんな人に意見をもらいながら、ブラッシュアップをしていくとよいでしょう。